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Free Space Path Loss, FSPL(フリースペース損失)

フリースペース損失(FSPL) とは、電波が自由空間(障害物、反射、干渉のない環境)を伝搬する際に生じる信号強度の減衰を理論的に示すものです。これは、距離とともに波面が広がることによって発生する 最小限の伝搬損失 を表し、無線通信システムにおける受信電力の予測において重要な指標となります。

FSPL の計算式

線形表現:

FSPL = (4πdf / c)²


デシベル(実務で一般的):

FSPL(dB) = 20 log₁₀(d) + 20 log₁₀(f) + 20 log₁₀(4π / c)


標準単位(d:km、f:MHz)で表した形:

FSPL(dB) = 20 log₁₀(d) + 20 log₁₀(f) + 32.45


変数の定義:

  • d = 送信機と受信機の距離(キロメートル)

  • f = 信号の周波数(メガヘルツ)

  • c = 光速(約 3 × 10⁸ m/s)

  • 32.45 = 単位変換に由来する定数

計算例

2.4 GHz(2400 MHz)の信号が 100 メートル(0.1 km)伝送される場合:

FSPL ≈ 20 log₁₀(0.1) + 20 log₁₀(2400) + 32.45 ≈ 80 dB


これは電力比に換算すると 10⁻⁸ に相当し、理想的な自由空間条件下では送信電力の 1 億分の 1 しか受信側に届かないことを意味します。

無線システム設計における役割

FSPL は無線リンクバジェット(受信電力予測)において 基本的な損失項 として用いられ、特に以下の分野で重要です:

  • 衛星通信

  • 携帯電話および Wi-Fi ネットワーク

  • 点対点マイクロ波リンク

  • レーダーシステム

  • 高周波伝搬モデリング

FSPL は理想的な空間伝搬を前提としていますが、実環境では以下のような追加要因が考慮されます:

  • 大気による減衰

  • マルチパスフェージング

  • 障害物や回折

  • 地形・建築物による損失

応用と実務での使用例

エンジニアは以下の用途で FSPL を利用します:

  • 十分な受信電力を確保するためのリンクバジェット設計

  • アンテナの配置と利得の選定

  • 固定/移動体向け無線システムのカバレッジ推定

  • 放射電力または電界強度に関する適合試験

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無線通信システムの設計と最適化を支援するため、以下のような計算ツールが広く活用されています:


最終確認・更新日:2025年5月27日(IBL編集チーム) このコンテンツはあなたにとってどの程度役に立ちましたか?