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AWGN(加法性ホワイトガウス雑音)

加法性ホワイトガウス雑音(AWGN: Additive White Gaussian Noise)とは、通信システムにおいてランダムなノイズの影響をモデル化するために使用される基本的な統計雑音モデルです。信号に対して加法的に作用し、全周波数で一様なスペクトル密度を持ち、ガウス分布に従う振幅を持つノイズとして定義されます。

定義と特徴

AWGNは以下の3つの特性を持ちます:

  • 加法性(Additive):ノイズは信号とは無関係で、単純に加算される

  • ホワイト(White):すべての周波数において均一なパワー(フラットなスペクトル密度)

  • ガウス分布(Gaussian):振幅はゼロ平均の正規分布に従う

このモデルは、ノイズ支配下の条件での通信性能を簡易かつ正確に評価するための標準手法として使用されます。

確率分布関数

AWGNの振幅は、平均 μ = 0、分散 σ²正規分布に従います。確率密度関数(PDF)は以下の通りです:

p(x) = (1/√(2πσ²)) × e^(-(x – μ)² / (2σ²))

ここで:

  • μ = 平均値(通常0)

  • σ² = 分散(ノイズのパワー)

振幅値の大部分はゼロ付近に集中し、大きな偏差は稀です。

数式による通信モデル表現

AWGNは通信システムにおいて、以下のようにモデル化されます:

r(t) = s(t) + n(t)

ここで:

  • r(t) = 受信信号

  • s(t) = 送信信号

  • n(t) = 加法性ガウス雑音

この式により、**SNR(信号対雑音比)BER(ビット誤り率)**といった通信性能の定量的評価が可能になります。

例:SNRによる音声劣化

AWGNチャネルを通じて送信された音声信号の例:

  • SNR = 20 dB → ノイズパワーは信号の1/100 → クリアな音質

  • SNR = 10 dB → ノイズは信号の1/10 → 明らかな歪みとノイズ

  • SNR がさらに低い聴き取り困難、誤り率増加

これは、SNRによって信号の明瞭度がどのように変化するかを示します。

通信システム設計における役割

AWGNは、以下のような目的で使用されるベースラインモデルです:

  • 変調・誤り訂正方式の性能評価

  • シャノン限界に基づくチャネル容量の推定

  • QPSK・OFDMなどの変調方式に対するBER評価

  • 通信リンク設計における基準ベンチマーク

実際の通信路にはフェージングや干渉、非ガウス雑音が存在する場合もありますが、AWGNは第一原理ベースの予測と最適化に最もよく用いられるモデルです。

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最終確認・更新日:2025年5月27日(IBL編集チーム) このコンテンツはあなたにとってどの程度役に立ちましたか?