Antenna Gain(アンテナ利得)
アンテナ利得(Antenna Gain, G)とは、アンテナが特定の方向に電波エネルギーを集中して放射または受信する能力を示す指標です。等方性アンテナ(dBi)またはダイポールアンテナ(dBd)と比較して表され、アンテナの指向性と効率を定量化します。
定義と単位
アンテナ利得は、以下の要素を組み合わせたものです:
指向性(Directivity):特定方向への集束度
効率(η):入力電力のうち放射に使われる割合
単位の違い:
dBi:理想的な等方性アンテナに対する利得
dBd:λ/2ダイポールアンテナに対する利得
dBi と dBd の関係式:
dBi = dBd + 2.15
利得の計算式
アンテナ利得は、アンテナファクター(AF)と周波数(f)を用いて次の式で求められます:
G(dBi) = –AF + 20 × log₁₀(f) – 29.8
ここで:
AF = アンテナファクター(dB/m)
f = 周波数(MHz)
29.8 = 50オームシステムの補正項
この式により、周波数ごとの送受信効率を定量的に評価できます。
実用例
現実のアンテナでの利得の例:
Wi-Fiルーター:2~3 dBi(屋内向け均一カバレッジ)
衛星用パラボラアンテナ:30 dBi以上(長距離通信)
携帯電話用アンテナ:0~9 dBi
指向性アンテナ(Yagi、パッチ等):高利得・狭ビーム用途向け
無線システム設計への影響
アンテナ利得は無線システム設計において以下の点で重要です:
カバレッジ範囲:利得が高いほどビームが狭く、遠距離通信が可能
電力効率:同じ距離でも送信出力が低くて済む
通信品質:利得と指向性のバランスでリンク性能が向上
目的に応じた利得設計が、性能・効率・規制適合性の実現に不可欠です。
Related Pages
アンテナ利得に関連する用語や設計パラメータ: