Beam Width（ビーム幅）

ビーム幅（Beam Width）は、アンテナが主方向に放射する主ローブの角度的広がりを表す指標です。半値幅（Half-Power Beam Width）とも呼ばれ、無線・レーダー・衛星通信において、アンテナの指向性、カバレッジ、空間分解能を定量化するために重要です。

E面およびH面のビーム幅

ビーム幅は、一般的に2つの直交する面において測定されます：

• E面ビーム幅：電界方向と最大放射方向を含む平面（通常、垂直面）

• H面ビーム幅：磁界方向と最大放射方向を含む平面（通常、水平面）

これらの測定は、アンテナの空間放射特性を把握し、方向性アンテナ設計において重要な役割を果たします。

指向性との関係

ビーム幅と指向性（Directivity）には反比例の関係があります。ビームが狭いほど、エネルギーが集中し、指向性が高くなります。近似式は以下の通りです：

D ≈ 4π / (θ_E × θ_H)

ここで：

• θ_E = E面ビーム幅（ラジアン）

• θ_H = H面ビーム幅（ラジアン）

→ ビーム幅が狭いほどアンテナの指向性が高くなります。

物理的な見積もり方法

ビーム幅はアンテナの物理サイズからも概算できます：

θ ≈ λ / d

ここで：

• λ = 波長

• d = 開口寸法（例：パラボラ反射器の直径）

→ 大きな開口サイズは狭いビーム幅を生み、高精度・長距離通信に有効です。

実用例：ビーム幅の典型値

• 携帯基地局アンテナ
  – 水平ビーム幅：約 65°
  – 垂直ビーム幅：約 7°
  → セクター分割によるエリアカバレッジと干渉制御を実現

• 直径1 mの衛星アンテナ（12 GHz）
  – ビーム幅：約 1.5°
  → 高利得で精密な通信に対応

応用と設計トレードオフ

ビーム幅は、以下のような設計判断に影響を与えます：

狭ビーム幅の特徴

• 高利得・長距離通信向き

• アライメントがシビア

• レーダー、衛星通信、ポイントツーポイントリンクに適用

広ビーム幅の特徴

• 広範囲カバレッジ

• 低利得、干渉リスク増

• 放送、基地局、移動体通信に適用

→ 設計者は、通信距離、干渉、実装制約、指向精度のバランスを考慮してビーム幅を設定する必要があります。