Effective Radiated Power(ERP、有効放射電力)
有効放射電力(ERP, Effective Radiated Power)とは、ハーフウェーブダイポールアンテナ(半波長ダイポール)を基準とし、アンテナの最大利得方向に送信される高周波(RF, Radio Frequency)電力を表す指標です。主に放送分野で使用され、信号強度、カバレッジ範囲、規制上の制限値を定義するために用いられます。通常、ERPはワット(W)またはキロワット(kW)で表されます。
ERPとEIRPの違い
ERP(有効放射電力)とEIRP(有効等方放射電力)の主な違いは、基準とするアンテナです:
ERP:基準はハーフウェーブダイポールアンテナ(利得 = 0 dBd)
EIRP:基準は理想的な等方性アンテナ(利得 = 0 dBi)
両者の換算式は以下のとおりです:
ERP = EIRP ÷ 1.64
ERP(dBm)= EIRP(dBm)− 2.15 dB
この2.15 dBの差は、等方性アンテナよりもダイポールアンテナの利得が高いことに起因します。
ERPの計算方法
線形形式:
ERP = P_t × G_d
ここで:
P_t = 送信出力(ワット)
G_d = ダイポール基準のアンテナ利得(単位なし)
デシベル形式:
ERP(dBm) = P_t(dBm) + G_d(dBd)
この計算式により、規制当局や技術者はカバレッジ範囲や干渉の可能性を標準的に評価できます。
例:放送システムの送信出力
50 kW ERPのFMラジオ局は、約82 kW EIRPに相当します
10 kWの送信出力と4 dBdのアンテナ利得を持つテレビ送信機は:
ERP = 10 kW × 2.51 ≈ 25.1 kW
このような値は、スペクトルの整合性を確保するために、各国の規制機関によって認可されます。
規制およびシステム設計における役割
ERPは以下の分野で重要な指標です:
FMおよびAMラジオ放送
テレビ送信
ERPおよびHAAT(平均地形高)に基づく免許手続き
FCC(米国連邦通信委員会)やITU(国際電気通信連合)などの規制機関は、ERPを用いて干渉を制御し、サービスエリアを定義し、周波数を割り当てています。従来の放送システムではERPが標準ですが、移動体通信や衛星通信ではEIRPの方が一般的です。
関連ページ
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