Effective Isotropic Radiated Power(EIRP、有効等方放射電力)
有効等方放射電力(EIRP, Effective Isotropic Radiated Power)とは、理想的な等方性アンテナを基準として、送信システムが最大アンテナ利得の方向に放射する総電力を定量化したものです。送信機の出力とアンテナの指向性利得を組み合わせることで、放射信号の強度を標準化して評価する指標です。
EIRPの計算方法
線形形式:
EIRP = P_t × G_t
ここで:
P_t = 送信出力(ワット)
G_t = アンテナ利得(単位なし、線形スケール)
デシベル形式(より一般的):
EIRP(dBm) = P_t(dBm) + G_t(dBi)
損失を含む場合:
EIRP(dBm) = P_t(dBm) − L_c(dB) + G_t(dBi)
ここで:
L_c = ケーブルおよびコネクタによる損失(dB)
これらの式は、無線システムの設計、リンクバジェット分析、規制適合において重要です。
例:Wi-Fiアクセスポイント
以下の仕様を持つWi-Fi機器:
送信出力:100 mW(20 dBm)
アンテナ利得:6 dBi
ケーブル損失:0 dB
結果:
EIRP = 20 dBm + 6 dBi = 26 dBm
(アンテナ最大利得方向に約400 mWの放射)
この例は、EIRPが送信出力とアンテナ特性の両方を反映していることを示しています。
規制上の重要性と用途
EIRPの制限値は、以下のような規制当局によって定められています:
FCC(米国): 例:免許不要帯域に関するPart 15.247
ETSI(欧州): 例:2.4 GHz帯に関するEN 300 328
これらの制限は、干渉の管理と公平な周波数利用を目的としています。適合性試験により、EIRPが許容範囲内に収まっていることが確認されます。
補足:EIRPは多くの用途で標準的な参照値ですが、FCCは放送や一部のセルラー用途(Part 22)ではERP(Effective Radiated Power)を基準としています。そのため、国際認証文書の作成時にはEIRPとERPの換算が必要になる場合があります。
利用分野
EIRPは以下の分野で使用されます:
無線LANおよび携帯電話ネットワーク
衛星通信およびマイクロ波通信システム
放送および点対点無線リンク
また、リンクバジェット計算、通信範囲の設計、アンテナシステムの設計にも欠かせない要素です。
関連ページ
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