ETSI EN 301 893
ETSI EN 301 893 は、ETSI(欧州電気通信標準化機構)によって発行された調和規格であり、5.15~5.35 GHzおよび5.47~5.725 GHzの周波数帯で動作する無線LAN(WLAN)機器に対する技術要件を定めています。
この規格は、無線機器指令(RED: 2014/53/EU)の本質的要件、特に周波数利用の効率化および干渉の回避に適合することを目的としています。
適用範囲
本規格は、RLAN(無線ローカルエリアネットワーク)技術に基づくブロードバンド無線アクセスネットワーク(BRAN)に適用されます。対象となるのは、IEEE 802.11a/n/ac/ax(Wi-Fi)に準拠した、UNII-1、UNII-2A、UNII-2Cバンドで動作する機器です。
対象となる機器の例:
アクセスポイントおよびルーター
Wi-Fi機能を備えた端末(ノートPC、タブレット、スマートフォンなど)
ポイント・ツー・ポイント/ポイント・ツー・マルチポイント無線ブリッジ
EN 301 893 に準拠して動作する機器は、以下を満たす必要があります:
DFS(Dynamic Frequency Selection)および TPC(Transmit Power Control)の導入(対象バンドにおいて)
チャネルアクセスルールおよび送信出力の最大値に従うこと
レーダーや他の既存システムへの有害な干渉を防止すること
技術要件
送信電力制御(TPC):リンクの維持に不要な場合は、送信電力を抑える必要があります(少なくとも3 dBの制御範囲が必要)。
動的周波数選択(DFS):UNII-2AおよびUNII-2Cバンドでは、レーダー干渉を回避するためにDFSの導入が義務付けられています。これには、レーダー信号の検出およびチャネル切り替え動作が含まれます。
エミッション制限:チャネル内(in-band)およびチャネル外(out-of-band)の不要放射に関する限度値が定められています。
占有帯域幅(Occupied Bandwidth):申告されたチャネル帯域幅と一致し、かつ規定された制限内でなければなりません。
媒体アクセスプロトコル(Medium Access Protocols):デバイスは「送信前に傍受(LBT)」および「クリアチャネル評価(CCA)」の手順に従う必要があります。
適合性評価と認証
EN 301 893 は、無線機器指令(RED)2014/53/EU に基づく調和規格として、欧州連合官報(OJEU)に掲載されています。
本規格への適合は、5GHz帯WLAN機器のCEマーキング取得に必要な前提条件です。製造業者は以下の要件を満たす必要があります:
認定試験所での型式試験の実施
EN 301 893 の適用範囲を明記した適合宣言書(DoC)の作成
全関連条項の適合を示す技術文書一式の用意
本規格は、特にDFSおよびTPCの要件が適用される場合、ノーティファイドボディ(Notified Body)評価において頻繁に参照されます。
最新バージョンの注意事項
現在有効なバージョンはEN 301 893 V2.2.1であり、2024年11月に正式に発行されました。このバージョンでは、周波数範囲5725–5850 MHzへの対応が拡張され、最新のWi-Fi技術(puncturingおよびmulti-link operationを含む)に関する試験手順が追加されました。
サポートとサービス
EN 301 893 に基づく試験、DFS検証、TPC評価、5GHz帯での規制適合に関するサポートを提供しています。
試験計画、技術文書、RED対応に関するご相談も承ります。
→ CEマーキングとEU市場アクセス
参考資料と公式リソース
ETSI公式規格(PDF、英語)
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EN 301 893 V2.2.1 – 5 GHz RLAN; Harmonized standard for access to radio spectrum
本ページでは、主要な情報を簡潔にまとめて掲載しています。最新かつ正確な規制情報については、必ず各国の公式ポータルサイトをご確認ください。最終確認:2025年4月