Bluetooth Low Energy (LE)
Bluetooth Low Energy(LE)は、2010年に Bluetooth 4.0 とともに導入された、短距離・低消費電力向けに最適化された無線通信プロトコルです。Bluetooth Classic とは異なり、LE はバッテリー駆動機器や断続的な通信に特化しており、ウェアラブル機器、センサー、IoT アプリケーションに最適です。
周波数と変調方式
Bluetooth LE は 2.4 GHz ISM バンドで動作し、2 MHz 間隔で 40 チャネルを使用します:
データチャネル: 37
アドバタイズチャネル: 3
変調方式には GFSK(Gaussian Frequency Shift Keying)が使用されます。以下のような複数の物理層(PHY)オプションが定義されています:
LE 1M PHY: データレート 1 Mbit/s(標準)
LE 2M PHY: データレート 2 Mbit/s(高速伝送)
LE Coded PHY: 125 kbit/s(S=8)または 500 kbit/s(S=2)、FEC(誤り訂正)による長距離伝送対応
これらの PHY により、通信速度と到達距離のバランスを柔軟に調整でき、かつ高いエネルギー効率が保たれます。
主な用途
Bluetooth LE は、低電力かつ短時間のバースト通信が求められる用途に広く使われています:
ヘルスケア・フィットネス: 心拍数モニター、温度センサー、フィットネストラッカー
産業・スマートホーム: BLE ビーコン、人感センサー、照明制御
周辺機器: BLE HID(キーボード、マウス)
ブロードキャスト用途: ビーコン配信、拡張アドバタイズ(Bluetooth 5以降)
データ通信には Generic Attribute Profile(GATT) が使用され、あらかじめ定義されたサービスとキャラクタリスティックに基づいて構造的な通信が行われます。
Bluetooth Classic との違い
BR/EDR と比較して、Bluetooth LE には以下のような特徴があります:
消費電力が大幅に少ない
接続プロセスやスリープモードが最適化されている
A2DP や SPP など従来のプロファイルは非対応
One-to-Many 広告や GATT ベース通信をネイティブでサポート
Bluetooth LE は連続データスループットでは Classic に及ばないものの、効率的な短時間通信に優れています。
試験および認証における重要性
Bluetooth LE 対応製品は、以下のような地域別の無線規格への適合が求められます:
欧州: ETSI EN 300 328
米国: FCC §15.247
グローバル: IC/ISED、MIC など
Bluetooth Classic と同じ周波数帯を使用していますが、チャネル構成やタイミング動作が異なるため、適合試験ではそれらを考慮する必要があります。また、標準プロファイルまたはカスタムサービスを実装する場合は、Bluetooth SIG の認証(Qualification) が必須です。