Loss (ロス、損失)
電磁システムにおける Loss(損失)とは、信号が空間またはコンポーネントを通過する際に生じる電力の減衰を指します。特に高周波(HF)、無線周波数(RF)、EMC分野では、エネルギーの損失と信号劣化を定量化し、最小化することが重要です。
Path Loss(伝搬損失)
Path loss は、電磁波が空間を伝搬する際に生じる電力密度の減衰を表します:
PL = (4πd / λ)²
ここで:
PL:伝搬損失
d:送信機と受信機の距離(m)
λ:波長(m)
この式は理想的な自由空間条件を前提とした単純化モデルです。実際には、反射・回折・吸収などの要因も総損失に寄与します。
Free Space Path Loss (FSPL)(自由空間伝搬損失)
FSPL は、理想的な環境における信号減衰を定量化し、フリースの伝送式から導かれます:
FSPL = (4πdf / c)²
または、対数形式では:
FSPL[dB] = 20 · log₁₀(4πdf / c)
ここで:
f:周波数(Hz)
d:距離(m)
c:光速(約 3 × 10⁸ m/s)
Transmission Line Loss(伝送路損失)
ケーブルや導波管内の減衰は次の式で計算されます:
α[dB] = 10 · log₁₀(P₁ / P₂)
ここで:
α:減衰量(dB)
P₁:入力電力
P₂:出力電力
Return Loss(反射損失)
Return loss は、インピーダンスの不整合により反射された信号の割合を示します:
RL[dB] = −10 · log₁₀(Pᵣ / Pᵢ)
ここで:
Pᵣ:反射電力
Pᵢ:入射電力
RL:反射損失(dB)
高いRL値は、より良好なインピーダンス整合を示します。
Insertion Loss(挿入損失)
Insertion loss は、コンポーネントの挿入によって生じる信号電力の低下を示します:
IL[dB] = −10 · log₁₀(Pₒ / Pᵢ)
ここで:
Pᵢ:入力電力
Pₒ:出力電力
IL:挿入損失(dB)
主な用途(Applications)
RF通信:リンクバジェット解析、通信距離の推定
無線ネットワーク:カバレッジおよび信号減衰のモデル化
アンテナ設計:放射効率向上のための損失最小化
衛星通信:長距離信号の評価
レーダーシステム:反射信号強度と伝搬影響の解析
EMC試験:シールドや結合損失のモデル化
マイクロ波工学:伝送路および部品の性能評価