Mutual Recognition Agreement(相互承認協定, MRA)
Mutual Recognition Agreement(MRA)とは、複数の国や地域が互いの適合性評価結果(例:試験報告書や認証)を正式に認め合う協定です。MRAの目的は、製品の重複試験や承認手続きを削減し、技術的貿易障壁を緩和することにあります。これにより、国際市場に向けた製品の迅速な展開が可能になります。
適用範囲
MRAは、規制当局による承認が必要な業界で特に重要です。対象となる分野には以下が含まれます:
無線・通信機器
電磁両立性(EMC)
電気安全
医療機器および計測機器
これらの協定は通常、各国の規制当局や地域貿易圏(例:EU–米国、EU–日本、APEC TEL)の間で締結され、以下の内容を含むことがあります:
試験機関の相互承認
認証機関の相互承認
規制枠組の同等性の確認
適合文書の相互受け入れ
技術的要件
MRAの技術的範囲には以下が含まれます:
ISO/IEC 17025に準拠した認定試験所の相互承認
双方の法域で有効な認証を発行できる機関の指定
技術基準や手続きの調和と整合(可能な範囲で)
情報共有と規制協力の継続的実施
各締約国は、承認された試験機関・認証機関のリストを管理し、それらが合意された要件に準拠していることを保証する必要があります。
認証および適合性
MRAにより、製造業者は自国内で実施した試験または認証を、相手国で再評価なしに受け入れてもらうことが可能になります。これにより、適合評価プロセスが簡素化され、上市までの期間(Time-to-Market)を短縮できます。
事例:
EU–米国間のMRA(通信機器):EUで認定された試験所の試験結果が、FCCにより特定カテゴリで承認される
EU–米国間のMRA(医療機器):品質マネジメントシステム監査の相互承認のみで、製品そのものの承認は対象外
EU–日本間のMRA:一部の電気・電子機器(VCCI認証、無線機器など)を対象
APEC TEL MRA:アジア太平洋地域での通信機器承認を円滑化
ただし、以下のような制限がある場合もあります:
高リスク製品(例:体内埋込型医療機器)は対象外
国家安全保障や健康保護の観点から現地試験が必須とされるケース
結果の相互承認があっても、追加の手続きが必要な場合
グローバル市場アクセスにおける役割
MRAは、国際的な規制調和と信頼構築を促進する手段として機能します。これにより:
重複試験と認証の排除
事務負担とコストの削減
規制対象産業の国際流通促進
複数市場への同時参入が可能に
MRAは、WTOのTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)や、ISOなどの国際標準化団体による整合的な技術基準に基づいて推進されます。
特に、現地拠点を持たない中小企業(SME)にとっては、効率的な海外市場参入手段として大きな価値を持ちます。